DNAラボ
巽教授の掲示板 致命傷のメカニズム Ai システム 事件の履歴 DNAラボ アクセス

近畿大学医学部法医学教室

住所
〒589-8511
大阪府大阪狭山市大野東377番地の2
名称
近畿大学医学部法医学教室
電話
072-366-0221
内線
事務室3118
FAX
072-366-7222
MAIL
houigaku@med.kindai.ac.jp


DNAラボ
SNPsを用いたDNA鑑定の検討

近畿大学医学部法医学教室では現在、倫理委員会の承認を受け、個人識別におけるSNPs(一塩基多型;single nucleotide polymorphisms)の有用性を調べる研究を行っている。

1.研究概要

法医学分野では様々な個人識別法が提案され、DNA鑑定の開発はその代表とも言える。
現在、DNA鑑定の主流となっているのは、STR(short tandem repeat)と呼ばれるDNA中の繰り返し配列を調べる方法である(図1)。STRとは2〜4個のヌクレオチドが2〜10回程度繰り返す並び方をしている部分で、個人によってその繰り返し回数が異なっている。
図1.STR

それに対して、当教室が注目しているのがSNPs(一塩基多型;single nucleotide polymorphisms)である。SNPsとはDNAの特定の場所で他人と1個のヌクレオチドが異なっている部分のことである(図2)。SNPsはSTRに比べ、劣化して短くなったDNAを用いて個人識別を行うのに有利であると言われている。

図2.SNPs

近畿大学医学部法医学教室では、SNPsを用いた個人識別が実務に応用できるかを調べている。
具体的に下記に示す3つの事項を調べている。

  1. ボランティアと司法解剖体のDNAから、46か所のSNPsデータを得る
  2. 過去の司法解剖体の試料(組織や血液等)を用いて、46か所のSNPsがどの程度検出できるかを調べる
  3. 同一試料に対してSNPsとSTRの解析結果を比べる
2.目 的

47座位のSNPsタイピングによる個人識別の有用性の調査並びに法医学分野への具体的応用の探索。

3.対 象

当教室で行われた司法解剖体から採取した組織や血液等の試料300個を対象とする。また、当教室員関係者及び当大学医学部生ボランティア300人から提供してもらった血液、口腔内細胞、爪等のDNA抽出可能な試料。

4.方 法

採取した試料からDNAを抽出し、47座位のSNPsと15座位のshort tandem repeat(STR)を調べる。研究は全て「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を遵守して行う。同一試料に対するSNPsとSTRの解析結果を比較し、SNPsタイピングの正確性を評価する。また、観測された遺伝子型頻度とハーディ・ワインベルグ平衡の成立を仮定した場合の遺伝子型頻度の期待値との相関性の有無を統計学的に評価する。

5.意義

SNPsは突然変異が少なく、断片化の進んだDNAでもタイピングが可能であることから、特にSTR解析が不可能な試料に対してその効果を強く発揮すると言われている。当教室の研究によって、個人識別におけるSNPsの利点を示すことで、これまでSTR解析を断念していた劣化の進んだDNA試料に対して個人識別が可能となる。

6.個人情報の扱い

司法解剖体に対しては、本ホームページ上で研究内容を告知することで、インフォームド・コンセントを省略して研究を行う。ボランティアからは文書によるインフォームド・コンセントを得る。試料は個人情報を削り、番号をつけて匿名化し、誰から得た試料なのかをわからないようにする。個人情報とこの番号を結び付ける対応表は作成しない。

2010年3月10日 高性能ゲノム解析器 導入

3月下旬 デモ開始
4月 本格稼動開始

弊教室 近畿大学医学部法医学教室はこのたび、超高性能ゲノム解析機を導入いたしました。
本機器は世界でもまだ100台足らずのもので、そのほとんどは癌の研究で使用されているものであり、法医学的意義を目的として研鑽する施設は日本では唯一、近畿大学の当教室だけである。
そのメリットは甚大で、

  1. ほぼ完全なる親子鑑定が可能である。
  2. 採取組織が被疑者のものであるとき、その民族の同定が可能である。
  3. DNA質量が5ナノグラムあれば、SNPジェノタイピングができる。
  4. 1症例のSNPジェノタイピングが迅速(約60時間前後)にできる。
  5. 一つの採取物が単一の組織由来か複数物か判断できる。

など、多岐多様に応用が期待される。

つまり、検査側の経験により判定が覆るような、結果ではなく、デジタル結果であるため、偽陽性が無く、証拠能力が高い。
また、未解決事件に寄与できるし、強姦事件の確たる証拠の提出も可能である。等々、社会的貢献は絶大である。
足利事件のようなことは二度と起こってはならないし、世田谷一家殺人事件の被疑者は非日本人といわれている。
強姦事件の泣き寝入りも多い。
そのような、事件解決の糸口になる資料作りに一石を投じたい。


平成22年3月28日

近畿大学医学部主任教授 法医学教室所属長  巽 信二